神奈川ボバース研究会主催 勉強会報告


神奈川ボバース研究会主催勉強会報告

2023年度神奈川ボバース研究会2nd

 

 

日 時:20231022日(日)10:0016:00
テーマ:立ち上がりと着座動作  〜構成要素の理解とHow to touch

講 師:福富 利之 先生(脳と身体のリハビリテーションふくりは代表、理学療法士、国際                                                  ボバース基礎講習会インストラクター)

内   容:講義、実技提示、症例デモンストレーション、質疑応答

会 場:横浜市立みなと赤十字病院

 

 今回、茨城県坂東市の脳と身体のリハビリテーションふくりは代表で、国際ボバース成人基礎講習会インストラクターとしてご活躍されている福富利之先生をお招きし、講義、症例デモンストレーション、実技提示・指導をしていただきました。

 講義では立ち上がりと着座動作について、動作の構成要素を姿勢の特徴、アライメント、神経筋活動に分けて詳しく説明していただき、最新の研究結果も踏まえてハンドリングの根拠を示してくださいました。また、日ごろの臨床で感じる下肢のstraight line pathwayとは? 股関節の中間位とは?といった、答えが明確でなく曖昧なままになっている疑問にも答えていただきました。

実技では「骨盤と股関節」、「下腿と足部」、「肩甲帯と上肢」の3つを提示していただきました。どのように筋肉や骨を触るか、自分の位置取りなどハンドリングの基本を丁寧に分かりやすく、時間をかけて指導していただきました。

 デモンストレーションは発症から1年程度経過した、右MCA領域の広範な脳出血で左片麻痺を呈した方に協力していただき行われました。治療はユーモアも交えながら終始和やか雰囲気の中で行われ、症例の方の心理面にも配慮されていました。また、評価や介入は若手の療法士でも分かりやすいよう、とても丁寧に説明していただきました。症例の方の立位は非麻痺側踵でしっかり立てておらず、麻痺側上肢や体幹、足部の内反に影響を与えているというリーズニングを説明していただき、両側性に評価し麻痺側の問題を解決することの大切さを再認識しました。症例の方のhopeである野球のピッチング動作を治療に取り入れることによって、症例の方がアクティブに変化していくハンドリングにとても感動しました。

 

 今回の研修会は神奈川ボバース研究会にとってコロナ禍後初の対面研修会でしたが、定員50名のところ49名の申込がありました。先生も驚かれるほど熱心に実技に取り組まれる受講生の皆さんの姿が印象的でした。 

 

(奈川ボバース研究会事務局 櫻井)

 


2023年度甲信越神ブロック研修会

 

日 時:2023916() 19:00-22:00

テーマ:『臨床場面から24時間コンセプトへの展開とその実践 

                   ~小児·成人領域のそれぞれの立場から~』

講 師:木野本 誠 先生

 (ボバースリハビリテーション教育センター所長,理学療法士,成人・小児

 ボバース基礎講習会インストラクター,アジア小児ボバース講習会講師会議長)

 吉田 真司 先生

 (重心型児童発達支援·放課後等デイサービス ボバースキャンプ施設長,

 理学療法士,小児ボバース基礎講習会インストラクター)

内 容:講義,ディスカッション,質疑応答

会 場:オンライン開催(Zoom

 

 今回、木野本 誠先生と吉田 真司先生をお招きし、『臨床場面から24時間コンセプトの展開とその実践~小児・成人領域の立場から~』をテーマに講義、成人および小児領域それぞれの症例動画を通して、思考過程を提示していただきました。なお、今回の研修会は一方の先生の講義の際にもう一方の先生に司会・進行して頂くことで、インストラクターの先生同士だからできるやり取りを聞くことができる形式を取りました。

 木野本先生からは24時間コンセプトについて、明確な定義はないとされながらも「その日の治療効果を最大化にするために、次の治療までの間にクライアント本人あるいは家族がとるべき行動の具体的案と工夫をする」ことであり、症例の個別性に合わせて考えることを心掛けていると説明され、そのプロセスを症例動画を交えて提示していただきました。治療効果を最大化にするためには運動学習が必須であり、すなわちリハビリテーション以外の時間でどのような生活を送り、運動を繰り返す(または繰り返さない)のか、何を意識してもらう(またはしない)のか、その方の性格を含めて、どのようにセルフマネジメントを伝えるのかに対するヒントを教えていただきました。また、それは課題の構成要素を理解し、ハンズオンから得られるcritical cue、クリニカルリーズニングにより成り立っているということを学ばせていただきました。

 吉田先生からは「不機嫌で落ち着かない重症児」に対して睡眠や呼吸といった、ヒトの核となるところから姿勢の安定性、快不快などの情動と辺縁系、記憶、注意や集中力の関係性を講義と症例動画を絡めて説明していただきました。睡眠と呼吸が整っているということは治療を行うための基盤となると思います。一方で、姿勢制御や安定性を考えた時にその治療効果を最大限に生かすために、呼吸を治療アプローチの手段として利用することがあると思います。このような睡眠や呼吸と治療の関連性を再度確認させていただいた貴重な講義であり、受講生からも活発な質疑応答がありました。 

 急性期や回復期、維持期、生活期、小児、成人など、どの病期でどのようなクライアントを対象にしていても、私達セラピストは24時間コンセプトについて悩みながら実践しているのではないかと思います。誰に対して、どのように、何を、どこまでの課題を伝えるのか、全人的に評価してクライアントまたはクライアントに携わる人々に何かを伝え、24時間コンセプトを実践することは決して簡単なものではないと思います。今回、お二人の先生から多くのヒントをいただき臨床現場で実践してみようと思った受講生もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。大変貴重な時間をありがとうございました。

 

 

神奈川ボバース研究会事務局 三橋


2023年度 神奈川ボバース研究会主催勉強会 1st

 

日 時:202379()

テーマ:Facilitation – How we touch and Why we touch? –促通

    どのように,そして,なぜ触れるのか?−
内 容:講義,症例動画,質疑応答
講 師:高橋 幸治 先生(国際ボバース成人基礎講習会インストラクター,森之宮病院・理学療法士)
開催形態:オンライン(ZOOM

 

 今回、国際ボバース成人基礎講習会インストラクターとしてご活躍されている森之宮病院の高橋幸治先生をお招きし、Facilitation(促通)をテーマにオンラインでご講義頂きました。

 はじめに、ボバースの歴史を紐解きながらどのようにしてボバースアプローチが発展してきたのか、歴史的背景を交えてご解説頂き、これまで知らなかったルーツを知る貴重な機会になりました。

 Facilitationと一言で言っても、その中にはハンドリングや環境調整・口頭指示といった要素、呼吸や重力、感覚への気づきといった運動制御に関連する様々な反応をセラピストは意識して行う必要があると思います。1つ1つは理解していても、複合的に解釈し実践的にクライアントに提供することの難しさは日々臨床の中で感じることと思いますが、今回の講義ではそれらを1つずつ丁寧に解説して頂けたことで、Facilitationに関連した自身の知識の整理とアップデートされたように感じました。

 高橋先生の講義は神経学的な知識はもちろん、その裏付けとなる研究データの提示、さらに実際の治療場面をVTRでご解説下さることで、全てが繋がる感覚が非常に印象的でした。オンラインでの開催ということもありどのようにして臨床に活かせるかといった課題に対しても、実技練習を行う際のポイントも含めご指導下さり、明日からの臨床で改めて実践していける内容であったように思います。

 今回、オンライン開催ではありましたが、受講生様や事務局スタッフからも実技やデモンストレーションを含め、対面での勉強会を改めて開催して頂きたいという声が上がっておりました。ぜひ今度は神奈川に高橋先生をお招きし、目の前で学ばせて頂けたらと思います。  貴重なご講義をありがとうございました。

 

                                   神奈川ボバース研究会事務局 出口


2022年度 神奈川ボバース研究会主催勉強会2nd

 

日時:20221218日(

テーマ:ボバースコンセプトに基づく姿勢制御と歩行〜ブラックボックス化させない評価と介入〜

講 師:三浦 先生(IBITA認定基礎講習会インストラクター,PT,東苗穂病院)

内 容:講義,実技・患者治療動画提示,質疑応答
会 場:オンライン開催

 

 今回, IBITA認定基礎講習会インストラクターとして活躍されている北海道の東苗穂病院PT三浦拓先生をお招きし,ボバースコンセプトに基づく姿勢制御と歩行について講義,実技・患者治療動画の提示をして頂きました.

 EBMが求められる昨今,歩行に関して脳卒中ガイドラインで示されるエビデンスレベルの高いものは頻回な歩行練習や装具を使用した歩行練習であり,ロッカー機能や股関節伸展の重要性が広く認識されています.ロコモーターである下肢への知識が広まり装具療法も進む一方で,パッセンジャーである体幹部や上肢,あるいは装具によって触れられる機会の減る足部(足関節以遠)がブラックボックス化(=セラピストが分からない、もしくは治療しない部分になること)しないよう,それぞれについてバイオメカニクスやニューロサイエンス,さらに進化の視点から見た歩行のご講義や実技提示をして頂きました.

 実技提示の動画では,コアコントロールの実践方法を緻密なハンドリングで提示して頂き,体幹と下肢,体幹と上肢など全身がそれぞれに双方向性の関係性を持っており,一部分だけでは無く全体のバランスや相互関係を考慮する必要があることを学びました.

 患者治療動画では4日間の治療期間の中で,適切な感覚が入力されやすいよう介入順も戦略的に考えながら筋緊張のバランスを整え,患者本人がその感覚を使いこなしボディスキーマの更新に働きかけるという実践を提示して頂きました.さらに治療効果が実際の病棟生活で自然と麻痺側上肢をバランス補助に使う,靴下を履く動作を両手で行うなどADLに汎化する場面を目の当たりにすることができました.

 今回,若手の方からベテランの方までそれぞれの方々が明日からすぐに臨床に活かせる多くのヒントを得られた実りの多い勉強会になりました.最後に先生から頂いた,「臨床は,ART & SCIENCE」という言葉に勇気づけられ,明日からもまた励んでいきたいと思います.

 

 

神奈川ボバース研究会事務局 金子


2022年度 神奈川ボバース研究会主催勉強会1st

 

日   時:202265日(日)10時半〜13

テーマ:「臨床における対象者の気づきを促す介入」

講   師:渕 雅子先生IBITA成人片麻痺上級講習会インストラクター、九州栄養福祉大学教授)

内   容:講義、臨床実践動画、質疑応答

会   場:オンライン開催

 

今回、IBITA成人片麻痺上級講習会インストラクターであり、九州栄養福祉大学教授の渕雅子先生をお招きし、「臨床における対象者の気づきを促す介入」というテーマで講義と臨床実践の提示をして頂きました。

 この勉強会は2020年度に開催する予定でしたが、コロナ禍となったことで約2年越しの実現となりました。今回は特にOTであれば臨床場面で悩むことも多いテーマに、全国から多くの先生が参加して下さいました。

講義では、まず対象者が何をどのように考え、計画し動くのかについて「セラピストが気づく」ことが重要であり、「セラピストが気づく」ことが「対象者が気づく」ことに繋がるといった相互関係によって「気づき」が成立することを学びました。その生理学的背景として、感覚情報は運動の開始や調節の他、身体図式や見当識を生成し、運動や行動の計画や自己存在感につながることから、感覚情報の意義を理解した介入は情動や意識という存在機能の回復にも有用であるという指針を頂きました。また、身体認知は運動制御と同時に生起され、双方向で相補的なプロセスであること、脳内身体表現は感覚情報を修飾して身体保持感・運動主体感となること、生活動作に必要となる知覚機能や適応的な運動の生成、行動生成機能に対して、実際の身体と脳内身体表現が一致するような介入方法を工夫することが重要であると学びました。

動画では、自己認識・自己存在感と自律性の回復に向けた3症例(ベッド上での布団の操作、トイレ使用時のドア操作、トイレ動作から移乗場面への汎化)とミラーセラピーにより自己認識と半側空間無視に改善がみられた1症例の実践場面をご提示頂きました。日常生活活動の背景となる機能障害を明確に捉え、機能と活動の統合を行うこと、自己決定につながる場面やタイミングを見過ごさず、積み上げていく過程を目の当たりにすることができました。また、先生の臨床での実践を通して改めて「気づき」は対象者とセラピストの相互関係によって成立し、対象者が自ら発動して運動・行動した結果、成立しうる過程であること、対象者が気づき自ら判断し自ら行動する「自律=自分で選択をして代用を駆使しながら生活を組み立てられること」を促す介入が生活行為に重要であることを学ぶことができました。

最後に、今回の勉強会を通してセラピスト自身が気づいていないことにハッと気づき、気づくための生理学的背景から気づく過程を知ることができました。また、気づきを促す実践場面やチームでの取り組みを提示して頂けたことで改めて自身の臨床を振り返ることができました。今回の勉強会のような「気づく」場に居合わせられたセラピストとしての意義や喜びを感じただけでなく、作業療法士としての礎となる勉強会でした。

 

 

神奈川ボバース研究会事務局 貫


2021年度 神奈川ボバース研究会主催勉強会 報告

 

日 時:2022年2月6日()
内 容:上肢機能
(講義,実技提示)
講 師:広田 真由美先生(日本ボバース講習会講師(JBITAOT Lecture) 
会 場: オンライン開催

 

 今回,山梨リハビリテーション病院の日本ボバース講習会講師会(JBITAOT Lectureとしてご活躍されている広田真由美先生に「上肢機能」をテーマに講義,実技提示をして頂きました.

講義では,上肢活動は常に姿勢コントロールを背景とした全身活動であることを考慮すること,また,骨盤の選択運動,脊柱の抗重力伸展活動,Scapula setting,肩甲上腕リズム,手の活性化(手内筋,示指,母指の重要性)などそれぞれの関係性に注意することが重要であると学びました.実技は脳損傷者の上肢の問題をもとに,健常者での①Vertical OrientationScapula setting,③ReachGraspを評価する上での3つのポイントを,オンラインでも実感できる実技を通して提示して頂きました.その中で上肢治療に必要な条件として,体幹・肩甲帯の適度な筋の長さと効率的な筋・骨のアライメントを整え,筋連結を正常化した中での複合的な多関節運動(選択運動)を治療すること,また,課題において対象物に適した手の構えと能動的な探索反応を促すために,セラピストははじめからhands onするのではなくhands offで探索を促し,必要であればhands onするといった知覚探索器官としての誘導が重要であると理解しました.

 

広田先生にはコロナ禍以前より講師の依頼をさせて頂いており,今回2年越しで実現した勉強会となりました.講義と実技提示はオンラインであることを感じさせない和やかな雰囲気で行うことができ,全国50名以上の多くの受講生が参加できたことは,オンラインならではの良さであると感じました.今後もオンラインの良さを活かしつつ,対面での勉強会の実現についても模索していきたいと考えています.

 

 

神奈川ボバース研究会事務局 佐藤

 

 


2021年度 甲信越神ブロック(成人・小児)研修会報告

 

〈日時〉2021.9.5 ()10:00-15:00

〈テーマ〉「臨床におけるCritical Cuesの捉え方」

〈講師〉木野本 誠 先生

〈内容〉講義、ビデオ症例提示、質疑応答

〈会場〉オンライン開催

 

今回、成人と小児のボバース国際認定インストラクターであり、アジアボバース小児インストラクター会議議長としてご活躍されている、ボバースリハビリテーション教育センター(BRiC)の木野本誠先生を講師にお招きし、「臨床におけるCritical Cuesの捉え方」というテーマで成人・小児合同研修を行いました。今回は木野本先生からのご提案で、講師と受講生の双方向性の研修会となるように、講義中10分毎に事務局スタッフをはじめとする参加者が先生とやり取りを交わす形式を基本として進行しました。なお、今回の活動報告は小児・成人分野それぞれの事務局スタッフの報告を掲載します。

 

<小児分野スタッフ>

午前の小児分野では、テーマでもある“Critical Cues”の思考過程についてご講義して頂きました。Critical Cuesの初期では治療の方向性の大枠を捉えるため、中期では目標への道順を見抜くため、最終的にはその目標が間違いないかを確立させるための手がかりとして、時期ごとに捉えて評価することの大切さについて説明して頂きました。また、この過程を通して治療目標・課題に対し、構成要素(順序性・関係性)の理由付けをするヒントとなるCritical Cuesを捉える上で、正常発達の要素や多関節運動連鎖の視点、複数の姿勢を比較し潜在能力を見つける視点が非常に重要であることを学びました。

症例は痙直型両麻痺の6歳の男児を提示して頂きました。はじめに治療前後の立位の変化を共有した上で、どのようなCritical Cuesの思考過程を辿ったのかを紐解いていく形で展開されました。症例の場合は、複数の姿勢(立位・装具あり立位・膝立ち・臥位)から体幹の潜在性をCritical Cuesとして見出し、足底からのオリエンテーションの最適化を図るためにまずは座位でのFeedforwardシステムへの介入から開始する治療の組み立てを解説して頂きました。動作の学習に必要なシナプスの構造的変化を起こすには、繰り返しの動作が必須であり、症例にとってプラスとなる構成要素を明確に絞らなくてはなりません。そのためにCritical Cuesは自分の治療を迷うことなく進めることを助けてくれるものであり、臨床や学びを助けてくれるものであるということを、今回の研修を通して深く学ぶことができました。

 午後の成人分野は、午前の小児分野でCritical Cuesの基本について説明したのち、症例提示を中心により具体的な治療アイデアにつなげていくという研修会全体の流れがあったため、ポイントを絞って症例の治療経過を学ぶことができました。また、時間で区切らなくとも、事務局スタッフと先生との双方向の掛け合いからどんどん講義が展開されていく様子が非常に良いと思いました。

 

<成人分野スタッフ>

講義冒頭では治療のプロセスについて、ある目標や課題に到達するための大まかな方向性を決定すること、目標や課題が近づいてきた時は、より細かい道順を知ることが大事であり、それらを知る手がかりがCritical Cuesであると述べられていました。また、Crinical Reasoningの整理と合わせて、何を課題にするか、その課題を達成するための構成要素は何か、なぜそこ(肩?体幹?)から介入するのかといった治療の関係性と順序性に対する理由付けのヒントになるのがCritical Cuesであるということを学びました。

小児分野の症例提示では、脳性麻痺のお子さんへの1日の治療場面を提示して頂きました。木野本先生の症例と出会った際の第一印象を含めた臨床の思考過程を分かりやすく解説して頂きました。何気ない観察のポイント1つが、治療の方向付けの大きな手がかりになっているといった内容がとても印象的でした。

成人分野では、生活期の症例への計3回の介入を提示して下さいました。Critical Cuesの見つけ方のコツとして「自然に過ごしている複数の姿勢や動作から推測する」ことなど基本的な観察の視点に加え、木野本先生のhands onで得られたCritical Cuesを具体的に示して下さいました。それにより、介入の際にどこから、何を、なぜ行うのかがとても分かりやすく、治療の流れを追うことが出来ました。また、静止画で治療を解説して頂きながら受講生側から質問及び動画の視聴を希望し、ハンドリングの内容や注意点について説明して頂きました。さらに、治療における環境設定やタオル・道具の使用など様々な工夫を知ることが出来ました。

 

今回の研修会はオンライン開催の新たな試みとして、講師と受講生が双方向にやり取りを交わす形式を取り入れました。対面での研修会が難しい今、受講生が積極的に研修会へ参加できるスタイルを模索しつつ、今後もより良い研修会の企画・運営を目指していきたいと思います。

 

 

神奈川ボバース研究会事務局


2020年度神奈川ボバース研究会活動報告 

 

〈日時〉2021.3.7 ()10:00-13:00

〈テーマ〉「姿勢制御に基づく臨床推論の実際」

〈講師〉木野本 誠 先生 

〈内容〉講義、ビデオ症例提示、グループディスカッション、質疑応答 

〈会場〉オンライン開催 

 

今回、IBITA成人と小児のボバース国際認定インストラクターおよびアジアボバース小児インストラクター会議議長としてご活躍されている、ボバースリハビリテーション教育センター(BRIC)の木野本誠先生を講師としてお招きし、「姿勢制御に基づく臨床推論の実際」というテーマで講義、ビデオ症例提示とグループディスカッションを行いました。 

 姿勢制御の講義では、動的な安定性を得るためには質量中心を高くすることが必要であり、そのために床反力を捉えることができるアライメントや軟部組織が求められることを学びました。また機能的な動作の為には、まず深層の単関節筋の活動による運動の質(方向性)を調整するFeedforwardの働きが大切であることを、わかりやすい例えを示しながら説明して頂き、姿勢制御のオリエンテーションについて理解が深まりました。

 臨床推論の講義では、Critical Cuesについて実際の臨床場面を示しながらその重要性を説明して頂きました。Critical Cuesを初期・中期・最終のそれぞれの段階毎に立てる事で、治療の基本方針や目標を明確にし、治療方針の妥当性の検討ができる事、そしてCritical Cuesを患者さんや他のセラピストと一緒に共有し探っていく事が大切であることを学びました。 

ビデオ症例検討では、発症から数年経過した右片麻痺の女性の症例を提示して頂きました。症例は動作時の麻痺側上肢の屈筋痙性が強い状態でしたが、麻痺手の回復や潜在性を知りたいという希望をお持ちでした。

運動は常に左非麻痺側の上下肢から開始され、右麻痺側下肢は膝折れするか反張膝での支持となり、また右足関節内反位のため足底から得られるオリエンテーションも限られていました。

それらが体幹の分節性と右上肢の回復を阻害しているというCritical Cuesを立て、それらを柱にして展開していく治療場面を解説して頂きました。

右足部の内在筋の促通から治療を開始し、最終的に右手指伸展が随意的に可能となり、また反張膝も軽減した歩容へと変化していく治療を解説していただき、姿勢オリエンテーションの大切さと運動連鎖について理解が深まりました。

手がかりとなるCritical Cuesにより治療方針を明確化し、評価介入することで、次のより明確なCueに進められる、という臨床推論をダイナミックにビデオ症例で拝見することができました。 

 

今回、神奈川ボバース研究会として初のオンライン開催の勉強会でしたが、全国各地から定数を超える多数の方に参加して頂きました。グループディスカッション後の質疑応答では多くの質問が挙がり、木野本先生には時間を延長して答えて頂きました。Bobath Conceptにおける評価介入は、臨床推論に基づく選択の積み重ねであり、「予測のないところで、変化には気が付けない」という木野本先生の言葉は、大変感慨深いものでした。

 

神奈川ボバース研究会事務局


 

2019年度関東甲信越神ブロック成人部門合同症例発表会

 

日 時:2020215

 

会 場:TKP 西新宿カンファレンスセンター

 

講 師:今水 寛先生(東京大学 大学院人文社会系研究科 心理学研究室 教授

 

 今回の関東甲信越神ブロック成人部門合同症例発表会は,今水寛先生による「感覚―運動学習のメカニズム」に関する特別講演と会員2名による症例発表でした.

 

今回,神奈川ボバース研究会のスタッフである中島氏(鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院:OT)が「麻痺側上肢への感覚入力により立位・歩行の変容に至った事例というテーマで発表を行いました.

  症例発表の内容は,壮年期の脳卒中事例に対して,非麻痺側上下肢の代償活動やStraight line pathwayの評価,Robot technologyによる歩行への影響を評価した上で,麻痺側上肢への感覚入力による介入(CHOR・タオルを用いた感覚入力)を行い,立位・歩行の改善を認めました.

    中島氏の発表を通して,非麻痺側上下肢の代償や麻痺側上肢が立位・歩行への影響と運動主体感と身体所有感などのSense of Agencyとボバースコンセプトとの関連を考える良い機会となりました.

  質疑ではボバースインストラクターより歩行とリーチの関連と手の感覚と足底の感覚の違いに関して有益なディスカッションが行われました.今水先生からはタオルと運動主体感に関して,重いボタンと軽いボタンを押すという研究を紹介され,運動する努力が主体感を想起すること,主体感を評価するIntentional Binding を用いることなど有益な助言をいただくことができました.

 

   症例発表場面(中島氏)

神奈川ボバース研究会スタッフ

 

神奈川ボバース研究会 事務局

  


 

2019年度日本ボバース研究会甲信越神ブロック研修会 報告

 

<日時>20191123日(土)・24日(日)

<内容>Postural Body Schema(姿勢身体図式)

<講師>日浦 伸祐 先生(理学療法士 ABPIA/IBITA基礎講習会国際インストラクター)

<会場>鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院・小さき花の園

 

日本ボバース研究会甲信越神ブロック研修会とは、成人と小児の講義・治療デモンストレーション・実技を内容としていることが特徴です。今回、神奈川ボバース研究会が担当し、ABPIA/IBITA基礎講習会国際インストラクターであり、日本ボバース研究会会長でもある大阪発達総合療育センターの日浦伸祐先生をお招きして、「Postural Body Schema」というテーマで開催しました。

 講義では、定型発達は姿勢制御の発達過程であり二足直立位制御の基盤となり、成人のBipedal standingに向けての治療方針や考え方と変わらない。対象者のBody Schemaを更新していくために、セラピストのハンドリングによって感覚入力を整え、対象者自身が修正したくなるように治療することが重要である。といった小児と成人に共通するボバース概念の実践を、神経生理学を踏まえて分かりやすく解説して頂きました。

 治療デモンストレーションは小児と成人ともに、終了後に撮影したビデオを供覧しながら講義の内容と絡め、先生のクリニカルリーズニングを解説して頂きました。

 小児のデモ後の実技では、股・膝・足関節のアライメント、筋の長さを調整し、足関節の外返しから腓骨筋の活動を高めました。成人のデモ後の実技では、基礎講習会でも行われているScapula settingBottom upを行いました。実技では小児、成人で共通する要素として、in to patternからout of patternweaknessの状態にある筋を伸張させることによって筋紡錘・腱紡錘を活性化し、筋の活動を高めること。また、対象者本人が内観した感覚・運動を再現することでBody Schemaを更新し、次の運動につなげていくことを提示して頂き、更に理解が深まりました。

今回の研修会は成人だけでなく、小児領域の会員の参加も多く、ABPIA/IBITAの両ライセンスをお持ちの日浦先生による成人と小児のデモや実技を通じ、双方の治療において共通する点などを学ぶことができ、大変貴重な勉強会となりました。

                                                                                          神奈川ボバース研究会 事務局 


 

神奈川ボバース研究会主催勉強会 2019年度1st

〈日 時〉2019630()
〈内 容〉Optimal Sitting
(講義,患者治療デモ,実技)
〈講 師〉鈴東 伸洋先生

                IBITA基礎講習会国際インストラクター 理学療法士 クオラリハビリテーション病院)
〈会 場〉横浜市立みなと赤十字病院

 

  今回,IBITA基礎講習会国際インストラクターとして活躍しておられるクオラリハビリテーション病院の鈴東先生をお招きし,「Optimal Sitting」というテーマで、講義・治療デモ・実技提示を含めた勉強会を開催しました。

 講義では,Optimal Sittingの神経学的背景,姿勢制御などに関する内容を分かりやすく理解することができました。特に体幹に関しては非麻痺側にも問題が生じることを網様体脊髄路の走行を示しながら丁寧に説明して頂きました。

 治療デモでは,症例の姿勢や運動を,観察に加えて徒手誘導に伴う反応をみて,臨床推論を繰り返しながら行う治療を提示して頂きました。症例の屈曲していた脊柱が徐々に抗重力方向に伸展し、支持としては不十分であった下肢が、支持脚として変化していく様子に引き込まれました。

 実技提示・指導では,麻痺側下肢での支持をいかに作っていくのかを、経験年数の浅い参加者にも臨床で実践できる実技を提示して頂き、神奈川ボバース研究会のスタッフがアシスタントに入り参加者と一緒に練習を行いました。

 

                                                                                          神奈川ボバース研究会 事務局 


 

神奈川ボバース研究会 2018年度 3rd.
〈日時〉2019.3.17(日)
〈内容〉Locomotion(講義,患者治療デモ,実技)
〈講師〉古澤 浩生 先生(理学療法士 IBITA基礎講習会国際インストラクター)
〈会場〉鎌倉リハビリテーション聖テレジア病院

...

 今回,リハビリテーション天草病院のIBITA基礎講習会国際インストラクターで活躍されている古澤浩生先生をお招きしました.勉強会のテーマであるLocomotion(歩行)に対して講義,患者治療デモ,実技提示・指導をいただきました.
 講義ではボバース概念,姿勢制御, Foot core functionなどLocomotionに関する内容を分かりやすく解説していただきました.
 患者治療デモでは,クリニカルリーズニングを説明しながら,ボバース概念による治療を提示していただきました.受講生と治療デモに関して質疑も行われました.
 実技提示・指導では,治療デモで用いた歩行に必要な上肢・手機能と下肢・足部の2つの実技を提示していただき,事務局スタッフがアシスタントに入り,参加者同士で実技練習を行いました.
〈感想〉
 講義,治療デモ,実技練習を通して,Locomotionに対するボバース概念による評価と治療を一貫して分かりやすく理解することができました.特に神経学的背景で「収束と拡散」を知識と共に臨床場面でどのように落とし込むのかを新たに学ぶことができました.
 また,治療デモでの古澤先生のクリニカルリーズニングと治療技術を目の当たりにして, How toではなく,臨床推論をしながら丁寧に治療を進めていく姿勢はとても学びが多く,我々事務局スタッフも日々の臨床場面で活かしていきたいと感じました.

 

神奈川ボバース研究会 事務局